ビー玉の見たもの [うた]
指の先から弾き飛ばされたビー玉が
他の玉たちに当たって欠けた
あれほど輝いていたすべすべの肌が
白い指紋のように渦を巻き
欠けた粉を飛ばして止まった
布の袋に大事に入れられていた玉は
ガチャガチャした袋に入れられた
それからずっと袋の中で
押し合いへしあいずいぶん長い時間の後
久しぶりに見た光は真っ赤なるつぼの中だった
それから玉の話は知らない
他の玉たちに当たって欠けた
あれほど輝いていたすべすべの肌が
白い指紋のように渦を巻き
欠けた粉を飛ばして止まった
布の袋に大事に入れられていた玉は
ガチャガチャした袋に入れられた
それからずっと袋の中で
押し合いへしあいずいぶん長い時間の後
久しぶりに見た光は真っ赤なるつぼの中だった
それから玉の話は知らない
誰もいない学校 [うた]
夏休みがまだ半分あると言うのに
自転車に乗って学校へ行く
誰かいないかなと校庭を覗く
できるならあの子がいないかな
そんな思いを裏切るように
真夏の校庭には誰もいない
ひまわりとカンナが揺れている
しおしおと自転車を押して帰る
想いでは蝉の声
自転車に乗って学校へ行く
誰かいないかなと校庭を覗く
できるならあの子がいないかな
そんな思いを裏切るように
真夏の校庭には誰もいない
ひまわりとカンナが揺れている
しおしおと自転車を押して帰る
想いでは蝉の声
夏夕空 [うた]
空はパステルカラーで遠くでは雷鳴が轟く夏の夕べ
さっきまで泣いていたミンミンの声も止んで
疲れた僕にはニイニイゼミの耳鳴りがシイシイ
目の奥が痛いよ息ができないよ
あの合歓の木の下で埋めてもらおうか
走すれば夕景に溶けて消える
この世に余分で汚いものとして
さっきまで泣いていたミンミンの声も止んで
疲れた僕にはニイニイゼミの耳鳴りがシイシイ
目の奥が痛いよ息ができないよ
あの合歓の木の下で埋めてもらおうか
走すれば夕景に溶けて消える
この世に余分で汚いものとして
合歓の花の女神 [うた]
この夏は思い出でも探しに行こうか
田舎の山や川や街にはあの頃が散らばって
僕を待っている気がする
団扇を持った少女がいるよ
白い浴衣と頬の紅が合歓の花のようだね
闇が訪れて蛍が淡く飛び始めて
どこからかお囃子が流れてきた
君があんまり美しいから
声もかけられなかったよ
こんな夜市のひと時に見つけた
合歓の花の女神様
田舎の山や川や街にはあの頃が散らばって
僕を待っている気がする
団扇を持った少女がいるよ
白い浴衣と頬の紅が合歓の花のようだね
闇が訪れて蛍が淡く飛び始めて
どこからかお囃子が流れてきた
君があんまり美しいから
声もかけられなかったよ
こんな夜市のひと時に見つけた
合歓の花の女神様
愛の歌なんて作れない 3 [うた]
あの日からずっと君の香りの中にいた
どこを見ても何をしても君だけを探してた
やがて季節はまたカタリと音を立てて回ると
風が白みを帯びて雲が高くなって君が遠く見えた
いつものように城跡へ続く道を登っても
息せききってついてくる君はいない
君にはずっと好きだった人がいて
二人で歩くうれしそうな
それでいて悲しみを帯びた君がいた
僕は何も言えずに遠くから見てた
さよならのため息が白く流れて消えた
どこを見ても何をしても君だけを探してた
やがて季節はまたカタリと音を立てて回ると
風が白みを帯びて雲が高くなって君が遠く見えた
いつものように城跡へ続く道を登っても
息せききってついてくる君はいない
君にはずっと好きだった人がいて
二人で歩くうれしそうな
それでいて悲しみを帯びた君がいた
僕は何も言えずに遠くから見てた
さよならのため息が白く流れて消えた
愛の歌なんて作れない2 [うた]
季節が変わる頃になると
二人の距離は近づいて
僕がそっと手を伸ばせば君が手を重ねた
君の柔らかさ僕の暖かさ
こんな日がずっと遠くまで
続いて行くと信じてた
また季節の目盛りがカチッと回る
白いブラウスが輝いている
緑の公園に自転車止めて
蝉しぐれに紛れて好きだよと言った
頷いた君を抱きしめた
君の香りの中に僕は飛び込んだ
二人の距離は近づいて
僕がそっと手を伸ばせば君が手を重ねた
君の柔らかさ僕の暖かさ
こんな日がずっと遠くまで
続いて行くと信じてた
また季節の目盛りがカチッと回る
白いブラウスが輝いている
緑の公園に自転車止めて
蝉しぐれに紛れて好きだよと言った
頷いた君を抱きしめた
君の香りの中に僕は飛び込んだ
愛の歌なんて作れない1 [うた]
電車のドアに寄りかかって
難しい顔しながら本を読んでいた
窓の外には麦の穂が揺れていた
毎日の往復は誰と話すこともなく
自分だけの時間だった
その日はいつも通りに電車に乗って
同じ場所に行こうとしたら
知らない女の子が窓の外を見ながら立ってた
僕はドアを挟んで反対の場所で
いうものように本を開いた
そしたら知らない女の子は
僕の本をのぞき込んで
何を読んでいるんですかと聞いた
それから二人でおしゃべりの日々
君は君のことたくさん教えてくれた
僕はなんとなく恥ずかしくて
僕のことはあんまり言えなかった
難しい顔しながら本を読んでいた
窓の外には麦の穂が揺れていた
毎日の往復は誰と話すこともなく
自分だけの時間だった
その日はいつも通りに電車に乗って
同じ場所に行こうとしたら
知らない女の子が窓の外を見ながら立ってた
僕はドアを挟んで反対の場所で
いうものように本を開いた
そしたら知らない女の子は
僕の本をのぞき込んで
何を読んでいるんですかと聞いた
それから二人でおしゃべりの日々
君は君のことたくさん教えてくれた
僕はなんとなく恥ずかしくて
僕のことはあんまり言えなかった
結局のところ弱いだけ [うた]
遠くから雨の兆しが忍び寄り
痩せ土の火山灰地に実る
青銅の麦の穂が揺れている
あんな場所で生きてきたか
寂しくはなかったか
ああもうすぐ麦は黄金色
麦じの終われば陸稲植だ
一度水稲が腹いっぱい食えればいいな
痩せ土の火山灰地に実る
青銅の麦の穂が揺れている
あんな場所で生きてきたか
寂しくはなかったか
ああもうすぐ麦は黄金色
麦じの終われば陸稲植だ
一度水稲が腹いっぱい食えればいいな
僕たちは何も知らない [うた]
僕たちはこんな世の中を知らないうちに泳いできた
大多数は面白おかしく生きようとかうまく生きようだとか
そんなことは考えちゃいない
ただ今日と言う日を何とかやり過ごそうと
懸命に手をばたつかせ汗を拭きつつ
明日のことなんて考える余裕もなく
傷つくだけ傷ついて泣くなだけ泣いて
歯を食いしばってここに立っている
飛んで行く鳥にため息を投げつけて
一歩でも進もうとしている
陽は大きく西に傾き
風が吹き影は伸びて
手伸ばした先の花は崩れ落ちた
それでもまだ終わりじゃない
まだ終わりじゃないと呟いた
私が言えることはそれだけだ
大多数は面白おかしく生きようとかうまく生きようだとか
そんなことは考えちゃいない
ただ今日と言う日を何とかやり過ごそうと
懸命に手をばたつかせ汗を拭きつつ
明日のことなんて考える余裕もなく
傷つくだけ傷ついて泣くなだけ泣いて
歯を食いしばってここに立っている
飛んで行く鳥にため息を投げつけて
一歩でも進もうとしている
陽は大きく西に傾き
風が吹き影は伸びて
手伸ばした先の花は崩れ落ちた
それでもまだ終わりじゃない
まだ終わりじゃないと呟いた
私が言えることはそれだけだ